「お気持ち仕事」って何かしら・・・? と、思った方も多いかもしれません。
私がこれまでご縁のあった腕ききの職人さんたちは、自分の仕事に対する誇りと「良い住まいをつくる。」「良い仕事をする。」という心意気で働くプロ集団です。
職人さんは、お仕事をしている時が楽しくて仕事にのってくると決まったお仕事以上の仕事をしてくれたり、プロとしての良い提案していただけることが多くなってきます。
それは、お見積りには表すことのできない、目には見えない、職人さんのお気持ち次第でやっていただけるプラスアルファ―のお仕事です。
たとえば・・・
大工さんでしたら、それぞれの木の特性を見分けて、「どの向きに使うと、この木が一番美しく見えるか?」「どの方向で使うことが最適か?」を 瞬時に判断して見分けてくれます。
昔の大工さんは当たり前だったのかもしれませんが、そんなことは、どの図面にも書いてありません。
昨今、ただ目の前にある木を使うだけの大工さんが多い中で、木の特性を見分ける時間を惜しまない大工さんは、「お気持ち仕事」をしてくれていると思います。
図面には書くことができない。図面に書いていていないけれど、ひと手間を掛ける。
これが「お気持ち仕事」です。
もちろん、誤解のないようにお願いしたいのですが、「どんなお仕事でも、仕事に甲乙を付けずに図面通り忠実に仕事をする。」というプロとしてのスタンスがある前提条件です。
それでは、職人さんが「お気持ち仕事」をしていただけるときは、どんなときでしょうか?
それは、適度な集中状態にある時だと思います。
これは、どんな人にも当てはまることです。
あなたも楽しい事をしている時、時間のたつのも忘れてその事だけに集中していた経験をしたことがあるでしょう。
たとえば・・・ゲームに熱中してた時。おもしろい仕事をしている時。大好きな趣味のものをつくっている時。
まわりのことが気にならなくなって集中して驚くほどの成果が出た経験があると思います。
そして人間の集中状態は気分が良い時でないとできません。
仕事をする職人さんも人間ですから、当然、良い気分の時も悪い気分の時もあります。
あなたも何か面白くない出来事があって怒っている時に、いくら大好きなことをしていても集中するどころか、それどころではないですよね。
同じように、不安や恐怖の感情がある時も集中状態にはなれないものです。
「また、上司に怒られるのではないか・・・?」と、ビクビクして不安に思っている時に良い仕事はできません。
さて、職人さんが適度な集中状態、気分の良い状態、楽しくてお仕事にのっている時に「お気持ち仕事」がいっぱい増える・・・。
全ての職人さんが毎日そんな状態で住まいをつくっていたら・・・? と、想像してみてください。
「とても素晴らしい住まいができる!!」 と、思いませんか?
誰も何も言わなくても、どんどんお仕事が良い方向に進んで、想いの込められた住まいになること間違いなしですね。
それでは、そんな状態の現場をどうやって、つくり出すことができるのか・・・?
まず、住まいづくりに関わるすべての人たちの安心感です。
安心感は人と人との信頼関係とコミュニケーションから生まれます。
住まいに関わるすべての人とは、お客様、建設会社の人たち、職人さん、監督さん、設計士さん、メーカーの人たち全てです。
すべての人がお互いに手を取り合って、誰かが偉いなどといった上下関係がなく、良い住まいをつくる一つのチームとして、それぞれの役割をまっとうすることです。
そう! 住まいづくりはジグソーパズルに似ているかもしれません。
ひとり一人がジグソーパズルのピースのように、誰かが一人抜けても住まいをつくるというジグソーパズルは完成できません。
ジグソーパズルのピースはこっちのピースが偉いなんてことがないように、ひとつひとつのピースに大切な役割があります。
住まいをつくるときも同じです。
「一軒の住まいをつくるとき100人くらいの人たちが関わることになる。」 というお話をすると多くの人たちは、びっくりされます。
100人くらいの人たちの「お気持ち仕事」が集まるとどんなイメージがいたしますか?
100ピースのジグソーパズルを、ただ完成するのではなく、あなただけのオリジナルなジグソーパズルを完成するように住まいはつくられるのです。
私の役割は「お気持ち仕事」をいっぱいつくり出す「場」をつくることです。
ひとつひとつのピース(関わる人)が色鮮やかに輝くようにすると、住まいも輝きを増すのです。
それこそが、この仕事の醍醐味です。
そんな素晴らしいお役目を与えていただいた関わる全ての人に改めて心から感謝をいたします。