動物は自分の縄張りをとても大切にします。
命を守る場所、生きる場所、子育ての場所だからです。
縄張りを侵されそうになると命を懸けて戦う姿さえ見受けられます。
人間も動物です。
ですから、住まいの中にも自然と縄張りが出来ています。
誰も意識しないので、どこまでが奥様の縄張りで、どこまでがご主人様の縄張りで、子どもはどこまで、なんて線が引いてあるわけではありません。
動物の世界でも線が引いてあるわけではありませんが、ここまでは俺の縄張り、みたいな動物的な感覚だけが存在して成り立っているのだと思います。
住まいの中にも自然と縄張りがあって、そのバランスが崩れている住まいが多々あります。
住まいの縄張りバランスが崩れると病気になる人が出たり、家庭不和が起きたり、家に居たくなかったりと良いことがありません。
私は何万件という住まいにお伺いした経験から、住まいの縄張りバランスをキャッチできるようになりました。
住まいの縄張りバランスを考えて住まいをつくっていく事が重要だと考えます。
また、住まいの縄張りは別の観点から見れば、居場所ということもできます。
奥様がいつも家に居る時間が長ければ必然的に住まいの中に奥様の縄張りが多くなるのが普通です。
キッチンを中心にリビング全体が奥様だけの縄張りになっていることが多く見受けられます。
それが悪いわけではありませんが、ご主人様は何となく家に帰りたくなくなってしまいます。
ご主人様の帰りの遅いのは奥様の縄張りのせいかもしれません。
さて、家の中を見回してみてください。
奥様の物とご主人様の物どんなバランスでどんな位置にあるでしょうか?
二人の物ばかりだよ~なんて聞こえてきそうですが。
二人の物でもどちらかの趣味の物、どちらかが好きな物になっていませんか?
ご主人様の物は影を潜めて奥様だけの趣味の物が大半を占める住まいが多いのではないでしょうか?
その場合の解決策はリビングに、ご主人様の居場所をつくってあげる事ですね。
書斎の様な個室ではダメですよ。
数年後には納戸に変わってしまい、そこも奥様の縄張りとなってしまいますから。
リビングに、ご主人様だけのカウンターデスクを作成して、ご主人様コーナーをつくる。
このような居場所をつくることで、多くのご主人様の帰宅時間が早くなったことは言うまでもありません。
一方で奥様の居場所がない住まいもあります。
先祖代々住む家に嫁いできたり、自分の意見を全て通す亭主関白ご主人の場合です。
奥様は気付かないうちに、ご主人の縄張りの中に入ってしまうわけです。
縄張りに入ってしまったと誰かが教えてくれるわけではないので、誰も気づくことはありません。
最初からそれが当たり前だと思ってしまうからです。
嫁姑問題も住まいに現れてきます。
奥様は代々引き継がれた家の中に自分だけが入ってしまうと、自分のの居場所を見つけられなくて、居心地の悪さを感じます。
また、ご主人の趣味の物の中にどっぷり浸かっていて、ご主人様の言いなりになってしまった古風な奥様も同じような状態に陥ります。
そうすると、何となく家に居るのが嫌いだったり、夫婦の仲にも不満が出て来たりします。
その時の解決策としては、奥様の趣味の物をリビングなど積極的に住まいに取り入れることが大切です。
古い物は特に力があって、意識的に変えていく必要があります。
思春期の子どもが家に帰らない。
そんな切実な問題も住まいが関係している場合もあります。
子どもにとって住まいは安心安全が確保された巣の役割がなければなりません。
その機能が失われ、その子の居場所がなくなった時に子どもは居心地の悪さを感じます。
そして住まいの中に安心安全の巣の機能を見つけることが出来ないと、住まいの外にその機能を探し求めてしまうのです。
子ども部屋を与えることではありません。
引きこもってしまうので、むしろ逆効果です。
リビングに子どもの居場所があるか?
検討する必要がありますね。
さて、あなたも住まいを見渡してあなたの縄張りがどんな風か一度考えてみてはいかがでしょうか?
誰かと一緒に住まうとは、必ず力関係と縄張りが生じていると・・・
住まいの縄張りは、動物の世界と何ら変わらない姿で私たちを無意識的に支配しているのです。